2025.11.27
- 楽しみ方
やっぱり、ピノが好き!
街の街路樹が落葉し、吐く息が白くなり始めると、もう冬がそこまで来ていることを感じます。路地裏のレストランからこぼれる橙色の灯りは一層暖かく思われ、中では楽しそうにワイングラスを傾けている、そんな光景がとても似合う季節です。二人が楽しんでいるグラスの中身は何でしょうか。それが、「ピノ・ノワール」だったら、これまた絵になりますね。
コノスルもピノ・ノワールには並々ならぬ想いがあります。そんなエピソードも含め、今回は、誰もが愛してやまないピノ・ノワールの魅力を探りながら、ピノ・ノワールの楽しみ方をお届けします。
■気まぐれな妖精?
赤ワイン用のブドウとして世界的に人気の高い「ピノ・ノワール」ですが、原産地はフランスのブルゴーニュ地方です。高級ワインで有名なロマネ・コンティのブドウ品種はピノ・ノワールで、ブルゴーニュのヴォーヌ・ロマネ村に畑があります。このほか、アメリカのオレゴン州やカリフォルニア州、ニュージーランド、ドイツ、そして、コノスルがあるチリでも高品質なピノ・ノワールが栽培されています。
ピノ・ノワールの栽培は決して容易ではありません。冷涼な気候を好み、涼しい気候でゆっくりと成熟します。温暖すぎると急速に成熟が進み、繊細な香りが飛んでしまったり、酸味が失われたりします。ピノ・ノワールの房は密集して育つため房の内部が蒸れやすく、病害虫にも弱く、日焼けや強風によっても容易にダメージを受けるなど栽培の難しさでも知られています。
また、ピノ・ノワールは醸造過程においてもデリケートです。果皮が薄いため酸化しやすく、温度変化にも敏感なので、収穫から搾汁までの取り扱いや発酵中の温度管理は特に注意が必要です。栽培の難しさに加え、醸造においても難易度が高い品種ですが、それらを凌駕するほどの魅力がピノ・ノワールにはあるのでしょう。
さらに、ピノ・ノワールは栽培された土地の土壌や気候などの影響をよく反映するといわれています。それゆえ、それぞれの地域性やワイン造りへのこだわりを表現できる点も造り手たちを虜にしてしまう理由なのかもしれません。
そして、ピノ・ノワールのワインは苺やラズベリー、レッドチェリーなどの赤系果実の香りがとてもチャーミング。渋みは穏やかで、フレッシュな酸味が特長です。滑らかでエレガントな口当たりも魅力の一つです。ワインの味わいは製造方法や熟成期間などによっても大きく異なるため、一概に言えませんが、熟成するとキノコ、スパイス、紅茶のようなニュアンスが生まれ、ワインにより複雑さを与えるなど、味わいも変化していきます。同じピノ・ノワールのワインといっても口にするワインによっては印象が異なるため、ピノ・ノワールを「気まぐれな妖精」と称する人もいます。
このように、ピノ・ノワールは他の品種では決して味わえない、独特の世界観を持っており、多くの人たちを魅了してしまうのです。
■コノスルのピノ・ノワールへの挑戦
ピノ・ノワールはコノスルにとっても特別な存在です。コノスルは、ピノ・ノワールという難しい品種にあえて挑戦し、自社の技術力とチリのテロワールのポテンシャルを世界に示そうとしてきました。1999年には「ピノ・ノワール・プロジェクト」を開始し、ブルゴーニュの著名な生産者であるマルタン・プリュール氏をアドバイザーに招き、専門的な知識と技術を導入したことにより、ピノ・ノワールの品質を飛躍的に向上させました。2009年には、獲得したノウハウを大規模に実践するためのピノ・ノワール専用セラーを建設し、2016年には世界最大のピノ・ノワールの生産者としての地位を確立しています。
また、コノスルは、環境に配慮したサステナブル農法や有機栽培(オーガニック)を実践し、ヴァラエタル(品種)シリーズから最高級キュヴェ「オシオ」に至るまで、幅広い価格帯でのピノ・ノワールの生産にチャレンジしてきました。
現在では、コノスルのすべてのシリーズでピノ・ノワールがラインナップされています。
■やっぱり、ピノが好き
コノスルのすべてのシリーズでピノ・ノワールがラインナップされている理由はこうした背景があったのです。ということで、今回はコノスルのビシクレタ レゼルバ シリーズとオーガニックシリーズのピノ・ノワールを例に楽しみ方をご紹介します。
<ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワール>
ビシクレタ レゼルバ シリーズは全14種類あり、ブドウ品種別でいえば11品種。それぞれのブドウ品種を理解するにも適しているシリーズです。この中の1本、「ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワール」は、ピノ・ノワール100%で造られており、チェリー、プラム、苺などの果実由来の香りに、熟成過程で得られたなめし皮やタバコのニュアンスが複雑性を与えています。
酸味とタンニンのバランスが良く、僅かにスパイシーな後味が楽しめるワインです。
こちらのワインには、濃厚なソースのお料理よりも、比較的シンプルに味付けされたものの方が、このワインの持つフレッシュな味わいとエレガントさを楽しむことができます。そこで、「鴨のロースト ベリーソース」を合わせてみました。塩・胡椒した鴨肉を、皮目を下にしてローストし、クランベリーやチェリーなどの赤系果実のジャムとバルサミコ酢と赤ワイン、そして隠し味に醤油を加えてさっと煮詰めたソースを添えました。付け合わせにグリーンのお野菜を添えれば、この季節にピッタリなクリスマスカラーの一皿が出来上がります。
ほどよい酸味のあるソースは「ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワール」と相性抜群でした。
この他、ローストチキンや和風ハンバーグ、しゃぶしゃぶとも相性が良さそうです。
<オーガニック ピノ・ノワール>
健康志向や環境保全に関心が高い方にもおすすめしたい「オーガニック ピノ・ノワール」は、オーガニック農法のピノ・ノワールを100%使用しています。醸造においては、50%をフレンチオーク樽で12ヵ月、残り50%をステンレスタンクで6~12ヶ月熟成しています。苺やチェリージャムの果実香に、なめし皮、微かに腐葉土やキノコなどの香りが特長的です。さらに新鮮なプラムを思わせる果実味があり、きれいな酸味と程よいタンニンが感じられます。若干ですが、ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワールよりも野生的というか、滋養味を感じる印象です。オーガニック ピノ・ノワールなら先ほどの「鴨のロースト」をトリュフソースにするとさらに相性が良くなります。
また、今回、ぜひともトライしていただきたいのが、和菓子です。ピノ・ノワールは和菓子、特に小豆との相性が良く、ピノ・ノワールの持つ赤系果実の代表格ともいえる苺を餡子で包んだ「苺大福」はぜひ試していただきたいペアリングです。
さらに新たな発見として栗との相性も良いことも分かりました。「栗蒸し羊羹」とオーガニック ピノ・ノワールを合わせてみたところ、栗の素朴な甘味と小豆のほのかな香ばしさがオーガニック ピノ・ノワールの持つ微かに放つ腐葉土やキノコなどの香りとリンクし、森のハーモニーを奏でていました。
和菓子とピノ・ノワールの相性の良さは、双方が持つ繊細でエレガントなストラクチャー(味わいの構成)がよく似ているのかもしれません。お正月の黒豆などもきっと合うのではないでしょうか。
ピノ・ノワールは洋風のお料理から和菓子まで幅広くマッチするだけでなく、そこに至るまでの幾多の困難を乗り越えて生まれる味わいに、多くの人がロマンを求め、そのワインに想いを馳せるのかもしれません。
まだまだピノ・ノワールの楽しみ方は広がりそうです。皆さんならではの楽しみ方をぜひ、見つけてください。
この記事で紹介したワインはこちら
ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワール

ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワール
鮮烈なチェリー、プラム、イチゴの香りに、なめし皮やタバコのニュアンスが複雑性を与える。中庸な酸味とタンニンのバランスが良く、複雑で豊かな味わいのワイン。僅かにスパイシーな後味が楽しめる。
オーガニック ピノ・ノワール

オーガニック ピノ・ノワール
イチゴやチェリージャムの果実香、なめし皮、微かに腐葉土やキノコなどの香り。新鮮で澄んだプラムを思わせる果実味があり、きれいな酸味と程よいタンニンが感じられる。
この記事を書いた人

ソムリエ
たけうち あけみ
竹内 綾恵美
- (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート
- SAKURAアワード2024 審査員
料理が大好きで、国内外問わず、旅先では必ず市場を訪れる。ワインに出会い、味わいはもちろんのことワイン文化の奥深さに魅了される。
2019年にワインエキスパート取得し、ワインと食の追求に邁進する日々。





