2026.02.26

  • コノスルのある暮らし

【コノスルのある暮らし】思い立ったが吉日。~春を連れてくる オーガニック ピノ・ノワール~

日が長くなってきた。
生暖かい風が頬を撫でる。
視界の端に、鮮やかな黄緑がちらちらと揺れる。
いつものコートが、急に暑く重たく感じられた。
そう、春はもうすぐそこまで来ている。

この季節になると思い出す風景がある。
それは20年ほど前の春の朝だった。
当時、私は念願かなって手に入れた小さな車が嬉しくて、時間があれば一人でどこへでも出かけていた。
いつもの田舎道を運転していると、不意に視界が一面淡いピンク色になったのだった。
思わずブレーキを踏み、後続車がいないことを確かめてから、ゆっくり進んだ。
白や黄緑の小さな花、芽吹いた若草。その上を、パステルピンクの花びらがひらひらと舞い落ちる。太陽の光を受け、あちこちでキラリと光るその景色は、ジョルジュ・スーラの点描画の中に迷い込んだようだった。
視界を埋め尽くす華やかさとは裏腹な無音のごとき静けさに時が止まり、得も言われぬ感動と高揚感に包まれた。

あの場所はどこだったのだろう。本当にいつもの道だったのだろうか。
後日、同じ景色を見ようとあの場所を探し回ったが、同じ風景に巡り合うことはできなかった。
誰かがブログやSNSで書き残していないか検索してみたが、それも無い。
狸に化かされたのか、おとぎ話か、夢だったのだろうか。首を傾げたくなるが、どれも違う。少しの眠気と肌寒さと、音の無さと、光と色が、記憶に焼き付いている。
誰かが用意してくれた特別な場所では無い、ただ自然が重なったその瞬間の前を、たまたま通りがかっただけだったのだろう。
思い立った瞬間の偶然の景色が驚くほどの美しさを見せてくれる、それは予定を立てて待っていたのでは出会えない奇跡なのだ。

この儚さと確かさを併せ持つのが春だ。
自分のタイミングでやってきて、足を止めることなく立ち去ってしまう。呼び止めても待ってはくれない。
だからお花見は思いつきぐらいが丁度いい。
天気が良くて、ちょうど仕事も予定もない、体調も良い。そんな三拍子が揃ったなら迷わず出かけるべきだ。
人気の名所や大行列のカフェを目指さなくていい。
近所のお散歩コースを気の向くままに歩いて、腰を下ろしたくなる場所を探そう。
春の空気に包まれながら、ゆっくり深呼吸をして。



持っていくのは、コノスルのオーガニック ピノ・ノワール。
グラスから立ちのぼるのは、摘みたてのストロベリーやチェリーのようなチャーミングな香り。春の野原を歩いたときのような、やさしい土の気配がふっと重なる。
ランチには、挟むだけのサンドイッチを。
レタスとロースハム、チーズ、アボカドをクランベリー入りのパンに重ねるだけ。
ハムとチーズの塩気をアボカドがやさしく受け止め、粒マスタードをほんの少し塗れば味がきゅっと引き締まる。隙間に苺を入れたら完成だ。
オーガニック ピノ・ノワールの軽やかな果実味とやわらかな酸が、サンドイッチの余韻をそっと持ち上げ、春を連れてきてくれるような心地よさをくれる。

そんな風にして歩いていたらあの桜の木の下に連れて行ってもらえそうだ。
あの景色は、日常のすぐそばで、何気なく動いたときにだけ現れる。

スニーカーを履いて、思い立ったが吉日。
春はきっと、またどこかで待っている。


この記事で紹介したワインはこちら

オーガニック ピノ・ノワール
オーガニック ピノ・ノワール

オーガニック ピノ・ノワール
イチゴやチェリージャムの果実香、なめし皮、微かに腐葉土やキノコなどの香り。新鮮で澄んだプラムを思わせる果実味があり、きれいな酸味と程よいタンニンが感じられる。

この記事を書いた人

河田 安津子

ソムリエ

かわだ あつこ

河田 安津子

  • 日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート
  • チーズプロフェッショナル協会認定 チーズプロフェッショナル
  • 「人生を豊かに愉しむためのワイン学」講師
  • レコール・デュ・ヴァン チーズ講師
  • フードコーディネーター

ワイン講師、チーズ講師として活動。
ワインとチーズ、その背景にある物語を大切にしながら、 日々の暮らしに寄り添う「人生を味わう時間」を提案している。