2026.01.13

  • コノスルのある暮らし

【コノスルのある暮らし】軽やかな決意。~ビシクレタ レゼルバ リースリング~

結婚したばかりの頃、「お正月の過ごし方」について夫と討論をしていたら新年を迎えてしまったことがあった。
一年の始まりは、誰にとっても新鮮で、爽やかで、特別なものだ。そんな特別な時間をどう過ごしたいか、それぞれに想いがあり、叶えたい過ごし方がある。
手作りのおせち料理を用意し、できるだけ沢山の人を集めてワイワイ過ごしたい夫。楽しそうだ。いかにも朗らかで社交的な彼らしい。
一方、おせち料理をつまみながら、好きなワインを飲んで、好きな映画を観て、積読本を読み、炬燵で心行くまでのんびり過ごしたい私。
どちらも幸せなお正月の過ごし方で、どちらか一方が正しいわけでも間違っているわけでも無い。
ただ一つ明らかなのは、前者の過ごし方をした場合、主婦の私は休めないということだった。

献立を考え、材料を洗い出し、人でごった返すお店を回る。
パンパンの買い物袋を肩に食い込ませ、作り慣れないおせち料理のレシピを調べる。
いつもは使わない食器を用意する頃になってようやく買い忘れたものがあることに気づいたりするのだろう。
想像力逞しくそんなタスク達が頭の中に順番に並び始め、悲愴という名の影をサッと落とす。数日前のクリスマスの余韻を楽しむ間もなく、新年早々失敗の許されない一大イベントの責任者に任命されるとはなんということだろう。
この悲愴感は私の未熟さなのだろうか。
他のお家では、どんなお正月を過ごしているのだろう。
そんな被害妄想にも似た疑問とお正月についての希望を話していたら、次第に討論になってしまったというわけだ。
結局、理想的なお正月の過ごし方について互いに一歩も譲れぬまま年を越してしまったという本末転倒ぶりに苦笑いをすることになった。その年のお正月をどんなふうに過ごしたのかは覚えていない。

あれから約10年、「お正月の過ごし方」について討論をすることは無くなった。
いつもの掃除に加えて窓拭きをし、キッチンを整理し、空気を入れ替えた部屋に季節のお花を少し飾る。
自分と家族が好きなおせちを準備して小皿に盛り付ける。
天神様に手を合わせ、深呼吸。
人が集まることもあれば家族だけで過ごすこともあるが、いずれにしてもまだ明るい時間からワインで乾杯をする。これだけは譲れない。
特別な過ごし方を確立したわけではないが、お互いのちょうどいいところに落ち着いたと言える。

掃除も食事の準備もいつもよりは手間がかかるが、このぐらいが我が家にはちょうどいい。
この“いつもより手間がかかる家事”を受け入れられるようになったのは、家族みんなが健康で食卓を囲めることがどんなに有難いことかを思い知ったからだ。
以前の私は未熟だったのではなく、知らなかったのだ。
当たり前だと思っている普通の暮らしが何よりも尊いのだということを。
そこに親族や友人も集まれるのならば、それは幸せな事なのだということも。

そんなことを知り始めた頃、すこしずつ作り慣れなかったおせち料理も手の抜き方が段々と分かってきた。買い物袋が肩に食い込むのは相変わらず閉口だが、買い忘れがあってもあるもので何とかできるようになってきた。
何かを大きく変えるわけではないけれど、新しい一年を健やかに優しい気持ちで迎えたい。
馴染んできた我が家のお正月に、そんな気持ちに寄り添うワインが一本あると嬉しい。



ビシクレタ レゼルバ リースリング。
グラスに顔を近づけると、ハチミツや檸檬、白い花のような甘やかさのある華やかな香り。爽やかな酸味と余韻に残る甘やかさが、ほんのり甘味を伴うおせち料理に寄り添い、色々なペアリングを気軽に楽しめる。
黒豆や栗きんとんには勿論、出汁の沁みた煮しめの里芋や人参とのペアリングも好きだ。

一緒に食べ、飲み、眠り、季節の中で共に歩む普通の日々を、今日も明日も重ねていけますように。
そんな日々を今年も送るのだという軽やかな決意を、たっぷりの煮しめや海老の塩麴煮にそっと込めて。


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ビシクレタ レゼルバ リースリング
ビシクレタ レゼルバ リースリング

ビシクレタ レゼルバ リースリング
ハチミツのような香りをベースに、アプリコット、リンゴ、レモンの花、シトラスなどを感じさせるノートが複雑に絡み合っている。糖分を少々残す(7g/L)ことで、ほんのり甘く感じるスタイルに仕上げている。

この記事を書いた人

河田 安津子

ソムリエ

かわだ あつこ

河田 安津子

  • 日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート
  • チーズプロフェッショナル協会認定 チーズプロフェッショナル
  • 「人生を豊かに愉しむためのワイン学」講師
  • レコール・デュ・ヴァン チーズ講師
  • フードコーディネーター

ワイン講師、チーズ講師として活動。
ワインとチーズ、その背景にある物語を大切にしながら、 日々の暮らしに寄り添う「人生を味わう時間」を提案している。