2025.06.20

  • 楽しみ方

夏の赤ワイン!

梅雨の季節がやってきました。どんよりした雲とジメジメした空気が一掃されれば、もうそこは夏本番!
何かと戸外でのイベントが多くなるサマーシーズンはBBQなどお肉の登場も増え、濃いめの味付けのお料理が案外多いもの。
こんな時はやっぱり赤ワインが欲しくなりますよね。そこで、今回は夏の赤ワインの楽しみ方をご紹介いたします。

■エチケットの表示には決まりがある

前回に引き続き、コノスルワインシリーズの中から「オーガニック」と「ビシクレタ」の赤ワインを比較テイスティングしながら、夏の赤ワインの楽しみ方をお伝えします。
セレクトしたワインは、次の4本です。

【オーガニック】
・カベルネ・ソーヴィニヨン/カルメネール/シラー
【ビシクレタ レゼルバ】
・カベルネ・ソーヴィニヨン
・カルメネール
・シラー

ここでお気づきになった方もいらっしゃることでしょう。今回、セレクトした赤ワインは、ブドウ品種が一緒です。しかしながら、オーガニックは3つの品種がブレンドされたものであり、ビシクレタシリーズは主体となる品種が1種類という違いがあります。つまり、今回はワインに使用する品種が同じでも、ブレンドしたワインと主体となるワインが特定のブドウ品種である単一に近いワインとの違いも検証してみたいと思います。
ちょっとその前に、エチケットの表示において、いくつか決まりがあることをご存知でしょうか。オーガニックの赤ワインは、3つの品種をすべて記載しています。ところがビシクレタシリーズは1種類ですよね。これにはワイン法が関係しているのです。

<チリのワイン法>
チリの新しい原産地呼称法「D.O.(Denominacion de Origen)」は、チリワインが国際的に評価を高めてきた1995年、農業保護庁農牧局により施行されました。
これは、ブドウ栽培地域を特定することを目的とし、ブドウ品種やヴィンテージ(ブドウの収穫年)のラベル表記についても規制を求めるようになりました。
「ビシクレタ レゼルバ シラー」のエチケットを例に見てみましょう。



1. 生産者ブランド(ビシクレタ レゼルバ)
2. 品種名(シラー)
3. 生産国(チリ)
4. 収穫年(2022年)
5. 生産者名(コノスル社)

まず、産地名については、定められたブドウ栽培地域内の、同一地域で収穫されたブドウを75%以上使用することで表記が可能です。
ビシクレタレゼルバは「チリ」となっています。特定のエリアのブドウを75%以上使用していれば、地域名を記載することができます。
②の品種名については75%以上同一品種のブドウを使用すれば表記できます。また、複数の品種を表記する場合は、15%以上使用の品種を多い順に3品種まで左から右へ表記する決まりがあります。
④の収穫年についても、75%以上同一収穫年度のブドウを使用すれば表記が可能です。産地名やブドウ品種、収穫年における使用ブドウのパーセンテージは国によって異なります。ちなみに、日本においては85%以上と定められています。

各ワインの詳細は以下の通りです。


ブランド名 オーガニック ビシクレタ レゼルバ
ワイン名 カベルネ・ソーヴィニヨン/カルメネール/シラー カベルネ・ソーヴィニヨン カルメネール シラー
ブドウ品種 ・カベルネ・ソーヴィニヨン 60%
・カルメネール 22%
・シラー 18%
・カベルネ・ソーヴィニヨン 87%
・メルロ 8%
・カルメネール 2%
・シラー 2%
・マルベック 1%
・カルメネール 85%
・カベルネ・ソーヴィニヨン 10%
・マルベック 2%
・シラー 2%
・アスピラン・ブーシェ 1%
・シラー 90%
・メルロ 10%
生産国 チリ
収穫年 2023年 2022年
生産者 コノスル社

「オーガニック カベルネ・ソーヴィニョン/カルメネール/シラー」の使用ブドウ品種は、規定通り、3つのブドウ品種を15%以上使用しており、割合が高い順に記載されています。
ビシクレタシリーズの3本は、75%以上使用されているブドウ品種のみエチケットに記載があります。

■ブレンドワインと単一品種ワインの違い

このように、ワインには、いくつかのブドウをブレンドしたタイプのワインと特定のブドウ品種100%で構成された単一ワインというものがあります。
当然、単一ワインは使用しているブドウ品種の個性をダイレクトに反映したワインになることが多いです。
一方、ブレンドワインは、それぞれのブドウ品種の持つ個性を活かしつつ、補完しながら、そのワインが目指す方向へと近づけていきます。

ちなみに、ビシクレタシリーズは主になるブドウ品種は1種類ですが、このほか何種類かのブドウをわずかながらブレンドしていますので、厳密にはビシクレタシリーズはブレンドワインになります。
また、「オーガニック カベルネ・ソーヴィニヨン/カルメネール/シラー」はカベルネ・ソーヴィニョンが最も多いものの、ほぼ近い数字でブレンドされていますので、味わいにおいてかなり違いがあると思われます。

前置きはこれくらいにして、いよいよテイスティングに移りましょう。
まずは、ブドウ品種の個性がわかりやすいビシクレタシリーズから。

ビシクレタ レゼルバ シラー



「ビシクレタ レゼルバ シラー」は、使用されているブドウ品種はシラーが90%、メルロが10%で、13ヶ月熟成しています。
シラーというとパワフルな印象を持ちやすいですが、「ビシクレタ レゼルバ シラー」はエレガントなスタイルです。また、酸は溌剌としており、シラー特有のややスパイシーなニュアンスも。全体的には、ベルベットのような滑らかさやスムーズな舌触りで、かつ適度なボリューム感もあります。

こちらのワインには、甘酸っぱい味付けのお料理が合いそうな予感がしましたので、肉団子の黒酢風味を合わせてみました。これは本当に好相性です。
ワインとお料理に共通する程よい酸味が食欲を増進させます。焼き鳥(タレ)など、醤油ベースの味わいにも上手に寄り添います。



ビシクレタ レゼルバ カルメネール

お次は、「ビシクレタ レゼルバ カルメネール」です。みなさんは、カルメネールというブドウ品種をご存知でしょうか。
カルメネールはチリを代表する黒ブドウ品種ですが、もともとフランス・ボルドーから伝わりました。
現在、ボルドーでは原木が全滅してしまったため、カルメネールの純粋種としてはチリ産のみとなっています。近年では、長期熟成ワインに向くポテンシャルの大きな品種として注目されています。

使用されているブドウ品種は、カルメネールが85 %、カべルネ・ソーヴィニヨンが10 %で、さらにマルベック、シラーなどが数パーセント程度ブレンドされています。熟成期間は6か月で、20%が樽熟成、80%がステンレスタンクです。



黒コショウのようなスパイシーな香りと熟したブルーベリーの香り。
またミントのようなハーブのノートもあり、これは10%のカベルネ・ソーヴィニョンの特長がわずかに出ているように思います。このどことない清涼感が夏向きの赤ワインかもしれません。

味わいについては、酸は穏やかで、まろやかなタンニンが心地よいです。全体的にはのびやかな印象ですので、カジキマグロのソテー バルサミコソースなど、油脂分の多い魚料理にもよさそうです。



ビシクレタ レゼルバ カベルネ・ソーヴィニョン

3本目は、「ビシクレタ レゼルバ カベルネ・ソーヴィニョン」です。赤いラベルとスクリューキャップがポップですね。
重厚な印象が強いカベルネ・ソーヴィニョンですが、パッケージからして、もう少し気軽に付き合えそうな予感がします。

使用されているブドウ品種はカべルネ・ソーヴィニヨンが87 %、メルロが8 %で、カルメネール、シラー、マルベックが数パーセントという構成になっています。カシス、ブラックチェリー、プラムなどの黒系果実の香りが特長的です。味わいは、骨格がしっかりしており、酸はやや高めですが余韻に旨味を感じます。
カベルネ・ソーヴィニョンらしい男性的なワインではありますが、爽やかでフレッシュな印象があります。こちらには酸味のあるトマトを使ったお料理が合いそうです。



夏休みのキャンプや仲間が集まるホームパーティなどでは、ソーセージのグリルやミックスピザ、ラグーパスタなどカジュアルなお料理が並ぶことも多いでしょう。そんな時に重宝しそうなワインですね。
重すぎず軽すぎない赤ワインをお探しなら、まさに「ビシクレタ レゼルバ カベルネ・ソーヴィニョン」がピッタリでしょう。

オーガニック カベルネ・ソーヴィニョン/カルメネール/シラー

4本目は、ブドウ品種の比率が近く、3つの品種で構成された「オーガニック カベルネ・ソーヴィニョン/カルメネール/シラー」です。
ブラックベリーや黒すぐりの果実の香りにタバコやヴァニラのニュアンスがあります。味わいも多層的で、酸とタンニンのバランスが良く、滑らかで、若干のミネラルも感じます。



こちらは、牛や羊、鴨肉などの赤身の肉料理との相性が特に良さそうです。また、ワイン単体でも十分楽しめる幅感がありますので、夏の夜にワインをしっぽり楽しむのも良さそうです。
また、酸味のあるブルーベリーのガレットとも相性が良かったので、アフターディナーでカシスやブラックベリーのムースやジェラートなど、冷やしたデザートと合わせれば夏らしいペアリングが楽しめるでしょう。


■夏の赤ワインの楽しみ方とサマーギフト



さて、いかがでしたでしょうか。赤ワインは秋冬ものと捉えがちですが、ワインのスタイルやペアリングによって、夏でも十分楽しめます。
一般的に、赤ワインを冷やしすぎると酸やタンニンが突出し、苦みと感じてしまう場合もありますが、「ビシクレタ レゼルバ」や「オーガニック」シリーズは通常よりやや低い温度であってもそのようなことはなさそうです。
むしろ、外気が高い分、夏は通常より2~3℃低いくらいの温度で楽しむ方がすっきりとした飲み心地が楽しめます。ポリフェノールも豊富な赤ワインですから、夏バテにも効果があるかも?

また、夏はお中元や帰省時のお土産など、ワインを贈られる場合もあるかと思います。今回ご紹介したワインはもちろんのこと、コノスルのファインワインとして絶対的な存在の「オシオ」や「20バレル」は贈答用にも喜ばれています。
夏の赤ワインと共に夏のワインライフをお楽しみください。



この記事で紹介したワインはこちら

オーガニック カベルネ・ソーヴィニヨン/カルメネール/シラー
オーガニック カベルネ・ソーヴィニヨン/カルメネール/シラー

オーガニック カベルネ・ソーヴィニヨン/カルメネール/シラー
エコサート認定の有機栽培葡萄を使用。オーク樽で6ヶ月、ステンレスタンクで2ヶ月熟成。チェリー、ラズベリー、イチゴなどの果実香、ヴァニラのニュアンス。滑らかで豊かなタンニンがあり、土壌に由来するミネラルの滋味が感じられる。

ビシクレタ・レゼルバ カベルネ・ソーヴィニヨンン
ビシクレタ・レゼルバ カベルネ・ソーヴィニヨン

ビシクレタ・レゼルバ カベルネ・ソーヴィニヨンン
鮮烈なカシス、チェリー、プラムの香りに、ミントやコショウなどスパイスの香りが複雑性を与えている。エレガントでしっかりとした骨格を持つ、果実味豊かで深い味わいのワイン。

ビシクレタ・レゼルバ カルメネール
ビシクレタ・レゼルバ カルメネール

ビシクレタ・レゼルバ カルメネール
黒コショウのようなスパイシーな香り、熟したブルーベリーの果実香、コーヒーなどの香り。フルボディで質の良い酸味、まろやかなタンニンがあり、バランスの良い味わい。余韻は長め。

ビシクレタ・レゼルバ シラー
ビシクレタ・レゼルバ シラー

ビシクレタ・レゼルバ シラー
イチゴやイチジクのジャム、煮詰めた赤い果実の濃厚な香り。シラー独特のスパイシーさも微かに感じられる。豊富なタンニンと、質感あふれる口当たりが印象的。やや若さはあるもののベルベットのような滑らかさ、スムーズな舌触りとボリューム感が味わえる。

この記事を書いた人

竹内 綾恵美

ソムリエ

たけうち あけみ

竹内 綾恵美

  • (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート
  • SAKURAアワード2024 審査員

料理が大好きで、国内外問わず、旅先では必ず市場を訪れる。ワインに出会い、味わいはもちろんのことワイン文化の奥深さに魅了される。
2019年にワインエキスパート取得し、ワインと食の追求に邁進する日々。