2025.05.28
- 楽しみ方
違いがわかると楽しくなる! オーガニック&ビシクレタシリーズ飲みくらべ3種
春に芽吹いた新芽はすくすくと葉を広げ、そろそろブドウの花が咲く季節になりました。
近くにワイナリーがあるかブドウ生産者でもない限り、ワイン用のブドウの花を見る機会は少ないと思います。
しかし、一度見れば、それがブドウの花であることはすぐにわかるようになるくらい特長的です。
そこで今回はワインのブドウ品種に着目しながら、多彩なラインナップを揃えるコノスルワインのシリーズの違いを含め、飲み比べをしてみたいと思います。
■超メジャー級のブドウ品種の特長を知る
今回、飲み比べするコノスルワインのシリーズは「オーガニック」と「ビシクレタ」です。どちらも比較的デイリーワインとして気軽に楽しめる価格帯のワインです。
コノスルでは、品種毎にワインをリリースしていますが、その中でもどのシリーズにも登場している超メジャー級の品種である、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、そしてピノ・ノワールの3種を飲み比べします。
まずは、それぞれのブドウ品種をおさらいしましょう。
<シャルドネ>

白ワインの女王とも称されるシャルドネ種の原産地はフランス・ブルゴーニュです。
冷涼な地域から温暖な地域まで、様々な気候条件のもとで栽培・成熟できる品種のため、ワインが生産されるほぼ全ての国で作られています。
産地や醸造方法によって、味わいのバリエーションが豊富なことも人気の理由です。
生産地における、土壌、気候、地形、歴史などの、その土地の個性を意味する「テロワール」という言葉の代名詞のように、シャルドネはその土地の気候風土を表現するといわれています。
また、醸造方法においてオーク樽を使用する場合としない場合などでは異なる味わいになります。
シャルドネ種で造られるワインのほとんどは辛口のスタイルで、カジュアルなスタイルから数十年にわたり瓶内熟成する高品質のワインまで幅広くあります。
このように、同じシャルドネ種を使用したワインといっても多種多様です。

ブドウ品種としての共通的な特徴というと、冷涼な地域でのシャルドネは、一般的に酸味が高く、青りんごや洋ナシ、柑橘系果物(ライムやレモン)の風味がします。
もう少し温かい地域で栽培されたシャルドネの場合は、酸味が和らぎ、柑橘系の香りに加えて桃やメロンのような少し甘味のある風味になることが多いです。
さらに温暖な地域では、パイナップルやバナナといった南国系フルーツの風味が出る場合があります。
<ソーヴィニヨン・ブラン>

ソーヴィニヨン・ブランも世界的に栽培されている白ワイン用のブドウ品種です。
原産地はフランスのボルドー地方といわれています。
こちらは冷涼な地域から温和な気候での栽培が向いています。
草やハーブ、青ピーマン、アスパラガスなどの草本植物の香りが特長的で、香りがはっきりしているためアロマティック品種※1に位置付けられます。
醸造においては、単体で造られることが多く、オーク樽、特に風味の強い新樽を使用することは稀です。
ソーヴィニヨン・ブランで造られたワインは、一般的に爽やかな風合いを楽しむため、若く新鮮なうちに消費することが望ましいとされています。
※1:アロマティック品種に対して、香りが穏やかではっきりとした特徴が薄い品種をニュートラル品種といい、シャルドネ種は、ニュートラル品種になります。
<ピノ・ノワール>

ピノ・ノワールは、フランスのブルゴーニュ地方が原産です。
カベルネ・ソーヴィニヨンと人気を二分するほどの赤ワイン用の代表的なブドウ品種です。
またピノ・ノワールは酸味が高いため、シャンパーニュなどのスパークリングワインにも使用されます。
比較的冷涼な地域を好み、栽培は容易ではない品種ではありますが、ピノ・ノワールの持つイチゴやラズベリー、レッドチェリーなどの赤系果実の香りがとってもチャーミング。
また、ワインの渋み成分であるタンニンは緻密でエレガントなスタイルのワインとなることが多く、非常に人気があります。
フレッシュな果実味豊かで爽やかなスタイルのワインもありますが、長い熟成期間を経て紅茶やキノコといった風味が現れ、複雑さのあるワインに発展させることができるのもピノ・ノワールの魅力です。
ブドウ品種の特長については、コノスルラヴァーズの過去の記事でも詳しくご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。
▽【ブドウ品種に詳しくなろう!】Vol.3「世界で最も有名な白ブドウ」シャルドネ
https://conosur-lovers.jp/article/entry-248.html
▽【ブドウ品種に詳しくなろう!】Vol.4「爽やかな香りの白ブドウ」ソーヴィニヨン・ブラン
https://conosur-lovers.jp/article/entry-252.html
▽【ブドウ品種に詳しくなろう!】Vol.5「ブルゴーニュ原産の偉大な赤ワイン」ピノ・ノワール
https://conosur-lovers.jp/article/entry-254.html
■人気のオーガニックとスタンダードなビシクレタシリーズ飲み比べ
さて、ブドウ品種の特長をざっとご説明しましたが、今回、2つのシリーズを飲み比べする上で予備知識として、オーガニックについてもおさらいしておきましよう。
コノスル・オーガニックワインのブドウが栽培される畑は、化学薬品を全く使用していません。肥料や病害の予防も草花やガチョウ、益虫などの導入による自然な方法で取り組んでいます。
これらの取り組みにより、コノスルのオーガニックシリーズはフランスの有機認証機関「Ecocert(エコサート)」の認証を得ています。
このエコサート認証はオーガニックにおける世界基準とされており、オーガニック製品の品質や製造工程、さらには環境への配慮などの厳しい基準をクリアしていることを示しています。
ブドウの栽培環境やワインの製法によっても味わいが異なるといわれるワインですが、具体的にどう違うのでしょうか。早速飲み比べてみましょう。
ソーヴィニヨン・ブランの飲み比べ

トップバッターは「ソーヴィニヨン・ブラン」です。オーガニック、ビシクレタ共にソーヴィニヨン・ブラン100%で造られたワインです。2つのワインのデータを表にまとめると次の通りです。
項目 | オーガニック | ビシクレタ |
---|---|---|
品種 | ソーヴィニヨン・ブラン100% | ソーヴィニヨン・ブラン100% |
格付け | D.O. サンアントニオヴァレー | チリ |
栽培 | エコサート認定の有機栽培 | 80%を手摘みで収穫 |
醸造 |
・低温でスキンコンタクト ・ステンレスタンクで発酵 ・樽熟成(無) |
・ステンレスタンクで熟成4ヶ月 ・樽熟成(無) |
香り |
・柑橘系果実の爽やかな香り(ライムやグレープフルーツ) ・グリーン系の穏やかな香り ・白い花や白桃のニュアンス |
・柑橘系の爽やかな香り ・スグリ、アプリコットの果実の香り ・リンゴキャンディの香り ・微かなハーブや緑の芝の香り |
味わい |
・アルコール感は中程度 ・酸は高め ・新鮮なライムやグレープフルーツなどの柑橘類の果実味 ・フレッシュな酸やミネラル感 |
・品種の個性がはっきりと現れている ・爽快でクリアなタイプ ・骨格がしっかりとしている ・和食との相性が良さそう |
飲み比べてみた実際の感想はといいますと、オーガニックは香りもマイルドで酸味がビシクレタに比べてやや穏やかです。しかしながら、山菜のようなほのかな苦みが感じられます。優しい味わいの中にも野性味を感じるような仕上がりです。
一方、ビシクレタはよりハーブのような香りと爽快感があり、酸味もシャープです。ややスモーキーなニュアンスも感じられました。
どちらもソーヴィニヨン・ブランが持つすっきりとした爽快感がありつつも、全体的に柔らかさと素朴さを感じるオーガニックとクリアではっきりした印象のビシクレタのソーヴィニヨン・ブラン。
山菜や香味野菜をたっぷり使ったお料理にはオーガニックがより合いそうです。
ビシクレタ レゼルバ ソーヴィニヨン・ブランはしっかり冷やし、白身魚やレモンを絞ったような酸味の効いたお料理に合いそうです。
シャルドネの飲み比べ

続いて「オーガニック シャルドネ」と「ビシクレタ レゼルバ シャルドネ」を飲み比べてみましょう。データは以下の通りです。
項目 | オーガニック | ビシクレタ |
---|---|---|
品種 | シャルドネ100% | シャルドネ100% |
格付け | チリ | チリ |
栽培 | エコサート認定の有機栽培 | 45%を手摘みで収穫 |
醸造 |
・低温でスキンコンタクト ・ステンレスタンクで発酵 ・マロラクティック発酵(無) ・5%のみフレンチオーク新樽で6ヶ月熟成 |
・ステンレスタンクで4ヶ月熟成 ・樽熟成(無) |
香り |
・レモンやグレープフルーツ ・白桃の甘いアロマ ・ミネラルのニュアンス |
・フレッシュなパイナップルのトロピカルな香り ・微かなハーブの香り ・オレンジなど白い花のニュアンス |
味わい |
・新鮮なレモンやグレープフルーツなどの柑橘類の果実味 ・ミネラル分と爽やかな酸 |
・柔らかな酸味 ・トロピカルフルーツを思わせる果実味 |
こちらの2本は、大きく異なるのが醸造方法で、オーガニックはわずか5%ですが樽熟成をしています。
一方、ビシクレタ レゼルバ シャルドネは樽熟成していません。この違いが味わいにどう影響するか、栽培方法の違いと合わせて検証してみたいと思います。
まず、オーガニック シャルドネですが、ビシクレタ レゼルバ シャルドネと比較するとボリューム感があります。
ビシクレタはややスリムな印象でメロンのような香りがします。
オーガニックは樽熟成したワインが含まれているせいか、パンを発酵させたようなニュアンスも感じられました。
ビシクレタ レゼルバ シャルドネはパイナップルやメロンなどの少し甘みを感じるフルーツを使ったお料理と相性が良さそうです。
ピノ・ノワールの飲み比べ
ラストは赤ワインで、「オーガニック ピノ・ノワール」と「ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワール」です。データは以下の通りです。

項目 | オーガニック | ビシクレタ |
---|---|---|
品種 | ピノ・ノワール100% | ピノ・ノワール100% |
格付け | チリ | チリ |
栽培 | エコサート認定の有機栽培 すべて手摘みで収穫 |
15%を手摘みで収穫 |
醸造 |
・選果後圧搾、果汁の50%を8℃で4日間マセラシオン後29℃で7日間発酵 ・パンピングオーバーは1日8時間。 ・マロラクティック発酵あり ・SO₂(亜硫酸塩)はごく微量使用 ・セカンドユースのフレンチオーク樽(ミディアムロースト)で6ヶ月、 ステンレスタンクで2ヶ月熟成 ・樽熟成(有) |
・35%樽、65%ステンレスタンクに4ヶ月熟成 ・樽熟成(有) |
香り |
・イチゴやチェリージャムの果実香 ・タバコやなめし皮などの香り ・微かな腐葉土やキノコなどの香り |
・はっきりとしたチェリー、プラム、イチゴの香り ・なめし皮やタバコのニュアンス |
味わい |
・新鮮で澄んだプラムを思わせる果実味 ・きれいな酸味と中庸なタンニン ・優しい味わい ・ミネラル分も感じられる |
・ほどよい酸味とタンニンのバランスが良い ・複雑で豊かな味わい ・僅かにスパイシーな後味 |
こちらの2本は、醸造方法がかなり違うようです。
よりオーガニックの方が手の込んだ造りをしているようですね。
飲み比べた印象は、オーガニックの方がタンニン(渋み)は多めで比較的酸味も高く、より野趣あふれる感じがしました。

一方、ビシクレタ レゼルバ ピノ・ノワールは、タンニンは抑えめでなめらか、なめし皮のニュアンスとスパイシーな風味もありつつ、全体としては丸みを感じました。
余談ですが、ワインというと洋風の料理に合わせるものと考えがちですが、そんなことはありません。
特に酸味と果実味が豊かなオーガニックのピノ・ノワールは、たこ焼きのソースと抜群の相性でした。
■スタイルに合わせて、ワインを楽しもう
ということで、今回の3種6本の飲み比べをしたことで、各シリーズの方向性が少し理解できたような気がします。
オーガニックはブドウ本来の味わいがややパワフルでその個性を残しているような印象がしました。
ビシクレタ レゼルバ シリーズは、ブドウ品種の個性を上手にコントロールし、より洗練されたワインに仕上げているといった印象です。
このように同じ品種でもワインのスタイルによって違いを体験した今回。
それぞれのワインシリーズの特徴を理解し、目的や好みに合わせて楽しんでいただければ幸いです。
6月は父の日もあり、ワイン用ブドウ品種にまつわる知識も併せて、家族で飲み比べをするのも楽しいかもしれません。違いの分かるカッコイイ大人を演出してみては、いかがでしょうか。

この記事で紹介したワインはこちら
オーガニック ソーヴィニヨン・ブラン

オーガニック ソーヴィニヨン・ブラン
エコサート認定の有機栽培葡萄を使用。樽熟成無し。ライムやグレープフルーツなどの柑橘系果実の爽やかな香り。白い花や白桃のニュアンス。キリッとした酸味が感じられ、瑞々しい果実の凝縮された味わいと豊かなミネラル分を感じる。
オーガニック シャルドネ

オーガニック シャルドネ
エコサート認定の有機栽培葡萄を使用。5%のみフレンチオーク新樽で6ヶ月熟成。レモンやグレープフルーツの爽やかな香りと白桃の甘いアロマ、ミネラルのニュアンス。ミネラル分と爽やかな酸が感じられる瑞々しい味わい。
オーガニック ピノ・ノワール

オーガニック ピノ・ノワール
エコサート認定の有機栽培葡萄を使用。オーク樽で6ヶ月、ステンレスタンクで2ヶ月熟成。イチゴやチェリージャムの果実香、なめし皮、微かに腐葉土やキノコなどの香り。新鮮で澄んだプラムを思わせる果実味があり、きれいな酸味と程よいタンニンが感じられる。
ビシクレタ・レゼルバ ソーヴィニヨン・ブラン

ビシクレタ・レゼルバ ソーヴィニヨン・ブラン
鮮烈なカシス、チェリー、プラムの香りに、ミントやコショウなどスパイスの香りが複雑性を与えている。エレガントでしっかりとした骨格を持つ、果実味豊かで深い味わいのワイン。
ビシクレタ・レゼルバ シャルドネ

ビシクレタ・レゼルバ シャルドネ
柑橘系の爽やかな香りやスグリ、アプリコット、リンゴのキャンディの香りがあり、微かなハーブや緑の芝の香りが印象的。品種の個性がはっきりと現れた爽快でクリアーなタイプ。骨格がしっかりとしていて和食との相性が良い。
ビシクレタ・レゼルバ ピノ・ノワール

ビシクレタ・レゼルバ ピノ・ノワール
鮮烈なチェリー、プラム、イチゴの香りに、なめし皮やタバコのニュアンスが複雑性を与える。中庸な酸味とタンニンのバランスが良く、複雑で豊かな味わいのワイン。僅かにスパイシーな後味が楽しめる。
この記事を書いた人

ソムリエ
たけうち あけみ
竹内 綾恵美
- (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート
- SAKURAアワード2024 審査員
料理が大好きで、国内外問わず、旅先では必ず市場を訪れる。ワインに出会い、味わいはもちろんのことワイン文化の奥深さに魅了される。
2019年にワインエキスパート取得し、ワインと食の追求に邁進する日々。