2021.01.21

  • 知識

【ブドウ品種に詳しくなろう!】Vol.3「世界で最も有名な白ブドウ」シャルドネ


ワイン用ブドウを知るシリーズ3回目は、白ワインの代表選手「シャルドネ」を取り上げたいと思います。シャルドネの特性をご説明したあとに、コノスルのシャルドネについて紹介していきます。

1,シャルドネってどんなブドウ?

■世界で最も有名な白ブドウ
シャルドネは様々な気候条件のもとで栽培・成熟できる品種のため、ワインが生産されるほぼ全ての国で作られています。「世界で最も有名な白ブドウ」と言われるのはそのためです。また、白ブドウにはリースリングに代表されるような香りの強い「アロマティック品種」と、あまり香りが強くない「ニュートラル品種」の大きく二つに分かれますが、シャルドネは典型的な「ニュートラル品種」です。

一言で言えば「どこでも作ることができて、なおかつ個性が強くない」というのがシャルドネの特徴ですが、だからといって「どこでも同じ味」になるのかというと、そうではないのがこの品種の面白いところです。産地の気候や醸造方法、そしてワインメーカーの意図と技術によって七変化し、世界中で様々なスタイルのシャルドネ白ワインが生み出されているのです。  

■「オーク樽」によって様々なスタイルに
シャルドネのワインスタイルを見ていくときにキーになるのは「オーク樽」。香りの個性が強くないシャルドネは、オーク樽を使ってトーストやココナッツなど樽由来の風味を加える醸造手法と非常に相性がよいのです。樽熟成を行うか行わないか、行う場合はどの程度にするのかによって様々なスタイルに分かれていきます。オーク樽を使わずにステンレスタンクだけを使って酸味とフレッシュさを活かしたアンオークスタイル、オーク樽でしっかり熟成をかけたリッチでクリーミーなフルボディスタイル、その中間で、オーク樽を少しだけ使ったライトなスタイルなどがあります。

そういった醸造方法は特定のワイン生産地の伝統というより、個々のワインメーカーの選択によるところが大きく、さらにトレンドもあります。かつてはシャルドネというと強いオーク香のイメージがありましたが、最近ではペアリングが難しいほどのオーク香は消費者から好まれなくなっており、樽の使い方にもより洗練さが求められています。

また、味わいにバターのようなリッチさを加える醸造方法として、多くの場合「マロラクティック発酵(MLF)」が使われています。これはブドウにもともと含まれる鋭い酸味の「リンゴ酸」を醸造過程で「乳酸」に転化させるもので、酸味を減少させて口当たりをまろやかにする効果があります。

こういった醸造方法や技術によって、ニュートラルなシャルドネに複雑さや旨みが加わり、魅力的なワインになっていきます。  

■スパークリングワインの主原料にも
そしてシャルドネのもうひとつの顔として、シャンパーニュやスパークリングワインの主原料として使われていることも忘れてはいけません。ピノ・ノワールなどの黒ブドウ品種とブレンドすることが多いシャンパーニュやスパークリングワインですが、シャルドネ100%のものは「ブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)=白の白」と呼ばれ、シャープな酸味を楽しむすっきりした辛口の泡として人気があります。

■気候による違い
生産地の気候によっても味わいに違いがあります。冷涼な気候ではシャルドネは青リンゴなど緑色系果実やレモン、ライムの柑橘類の風味になり、温和な気候では柑橘系に加えて白桃やメロンなどの果実の風味になります。温暖な地域ではバナナやパイナップル、マンゴーといった、熟したトロピカルフルーツの風味が一般的になります。

世界中で作られているシャルドネですが、代表的な産地といえば、歴史が長くハイエンドな白ワインが生み出されるフランスのシャブリ、ブルゴーニュのほか、カリフォルニア州ロシアン・リヴァー・ヴァレーやロス・カーネロス、オーストラリアのアデレード・ヒルズやマーガレット・リヴァー、ニュージーランドのマルボロ、チリのカサブランカ・ヴァレーやセントラル・ヴァレーなどが高い評価を受けています。

■「シャルドネ」の特徴まとめ


1. 最も有名な白ワイン
2. 土壌や気候を選ばず広い範囲で栽培されている
3. 気候によって酸味や特徴がはっきりする
4. 地域の伝統よりワイン醸造者の考え方がスタイルを決める
5. スタイルのキーになるのは「オーク樽」の使い方
6. スパークリングワインの主原料としても愛されている

2. コノスルのシャルドネ  

■シャルドネ栽培に適したカサブランカ・ヴァレー
シャルドネの代表的産地であるチリ。緯度的には、先ほど紹介した気候帯の「温和」になりますが、太平洋を流れる寒流のフンボルト海流の影響を受け冷涼な気候要素が加わり、両方の気候の特徴が見られるのです。特に、太平洋に近く冷涼なカサブランカ・ヴァレーのシャルドネは高い評価を受けています。朝は霧に覆われ、また一年中海から吹いて来る冷たい風の影響でブドウがゆっくりと成熟し、きれいな酸味のあるブドウが育てられているのです。シャルドネのほか、ピノ・ノワールなどの黒ブドウにも適した産地です。  


<シャルドネの銘醸地カサブランカ・ヴァレー >


コノスルでは、様々なスタイルでシャルドネのワインを生産しており、価格帯によって産地を分けています。高級ラインで使用しているのがカサブランカ・ヴァレーにある「エル・センティネラ農園」で栽培したブドウです。「シングルヴィンヤード」「20バレルリミテッド・エディション」そしてブラン・ド・ブラン(シャルドネ100%)のスパークリングワイン「センティネラ ブリュット」がエル・センティネラのブドウを使っています。

■「エル・センティネラ農園」で上質なブドウが生まれる理由
「エル・センティネラ」は、フンボルト海流が流れる太平洋から7㎞の場所にあり、チリのブドウ栽培地域の中でも最も冷涼なブドウ畑のひとつです。冷たい海風の影響で毎朝霧が発生し、気温は早朝で1℃、朝が4℃と大変涼しいですが、昼になると20℃ぐらいまで上昇するので、昼夜の寒暖差は約20℃にもなります。昼夜の寒暖差が大きいと、糖度が高く酸味も十分に残ったぶどうが育ちます。ブドウは昼間に糖分を作り、その糖分をブドウ自身のエネルギーとして消費しますが、夜に涼しくなるとエネルギーの消費が少なくなるため、昼間に作られた糖分が蓄えられていきます。

「エル・センティネラ」は土壌も優れています。三層の構造になっていて、一番下がミネラルを豊富に含むごつごつした石の層、真ん中が粘土質、表面がブドウ畑にある様々なものが積み重なった層で、崩れやすい性質を持った土壌のため、根が地中まで伸びていきやすくなっています。真ん中の土壌は粘土質のため高い保水性を有しており、雨がほとんど降らないこの地域では栽培用水が確保できる重要なポイントになります。水は地下水を利用(地中90m程度まで掘って水を吸い上げている)していますが、冬にわずかに降る雨と、この地下水を利用した灌漑で得た水を、保水性に優れた粘土質土壌がしっかりと蓄え、ブドウは収穫までしっかりと育つのです。

3. コノスルのシャルドネに合う料理は?

ペアリングを考える上でも「樽」のありなしはとても重要です。コノスルではシャルドネは4種のラインナップがありますが、それぞれ樽の使い方が違っています。


1. ビシクレタ・レゼルバ
ステンレスタンクで4~12ヶ月(アンオーク)
2. レゼルバ・エスペシャル
15%をフレンチオーク樽で、85%をステンレスタンクで5ヶ月
3. シングルヴィンヤード
20%をフレンチオークで5ヶ月、80%をステンレスタンクで6ヶ月
4. 20バレルリミテッド・エディション
80%をフレンチオーク新樽で7ヶ月

前回のメルローでもご紹介したフードライター、フィオナ・ベケット氏は「シャルドネを料理に合わせる場合はワインのスタイルを考慮して選ぶのがよい」とおすすめしています。フィオナはイギリスのThe Guardian(ザ・ガーディアン)誌やワイン雑誌Decanter(デキャンター)などにもフードペアリングの記事を書いています。

フィオナ曰く「シャルドネが好きじゃない、という方がまだまだいますが、シャルドネは素晴らしい“フードワイン”なので、ペアリングを考えている方には最適です。シャルドネに飽きてしまった,という人がいるとしたら、それは何通りでも食べ方があるチキンに飽きた、と言っているようなもの」とのこと。

ペアリングのキーになるのはやはりオーク樽の使い方で、スタイルによって4つに分類し、それぞれ合う料理を紹介しています。それぞれにコノスルのどのワインが該当するのか当てはめてみました。

A:若々しくてアンオーク、冷涼な気候のシャルドネ
→ビシクレタ・レゼルバ

・簡単に調理したカニや海老などの甲殻類
・魚のパテやチキンや野菜のテリーヌ
・野菜のクリームスープ
・春野菜のリゾットやパスタ。
・デリケートなスパイスのフィッシュサラダ
・刺身、オイスターなど。




B : 温和な気候でフルーティ、アンオークまたは軽いオークのシャルドネ
→レゼルバ・エスペシャル/シングルヴィンヤード

・サーモンパイ、サーモンケーキ
・クリームソースのチキンまたはポークのパスタ
・チキンやハムをベースにしてマンゴーやマカデミアナッツを入れたサラダ(シーザーサラダなど)
・バターソースのマイルドカレー





C : オーク樽でしっかり熟成したフルボディのワイン(1〜3年)
→20バレルリミテッド・エディション

・エッグベネディクト
・ヒラメ、グリルした子牛、マッシュルーム、赤ピーマンやコーン
・かぼちゃのラビオリを添えたもの。
・チーズとのペアリングであればチェダーチーズ
・フォアグラ  




D: オーク樽で長熟させたシャルドネ(3〜8年)
→20バレルリミテッド・エディション

・グリルしたロブスターや帆立など旨みのある料理
・ローストチキン
・マッシュルーム、ローストトマトに白トリュフをかけたもの。

樽の熟成が長いほどワインの味わいもリッチになり、合わせる料理も高級なものになります。家でデイリーに楽しむには、AまたはBのタイプだと合わせる食事の範囲も広がるのでおすすめです。特に冬に食べたい「クリームソースのチキンパスタ」「チキンやハム、ナッツ入りシーザーサラダ」「バターソースのマイルドカレー」などのメニューには、樽がほどよく効いたレゼルバ・エスペシャルやシングルヴィンヤードは確かにとてもよく合いそうです。  

4. シャルドネ3種を飲み比べ

今回はオーク樽を使った3種、レゼルバ・エスペシャル(15%をフレンチオーク樽)、シングルヴィンヤード(20%をフレンチオークで5ヶ月)20バレル(80%をフレンチオーク新樽で7ヶ月 )の3種を「樽の影響」を意識しながら飲み比べてみました。



レゼルバ・エスペシャルは最初の印象はアンオークに近いフルーティ&フレッシュな感じですが、飲み進めるとほんのりとコクがあり、ナッツのニュアンスとミネラル感が出てきます。

シングルヴィンヤードは、「エル・センティネラ」のブドウを使っているということで、上質でエレガントな果実味がありながらもミネラル感が強く、さらに樽による複雑性も加わっています。それでいてあまりトーストやヴァニラの「樽」が主張されていないので、醤油ベースの和食にも合います。例えば、コクのある鶏だしスープとセリを使った「地鶏なべ」にとてもよく合いますので、ぜひ一度試してみて下さい。



20バレルシャルドネは、ブドウの上質さを活かし、80%オーク樽を使いながら、食事に合わせることをよく考えられているので、わざとらしい樽香が一切なく、合わせるだけでなく料理を引き立ててくれる絶妙のバランスのワインです。フィオナのおすすめ通り、チキンや魚などの淡泊な食材をバターやナッツやチーズなどで少しリッチにした料理にベストマッチであることは間違いありません。

「フードワイン」という異名がついたシャルドネ。それぞれのワインスタイルに合わせたペアリングをぜひ、楽しんでみてください。

<参考記事>
https://www.matchingfoodandwine.com/news/pairings/the-best-food-to-match-with-chardonnay/

<参考文献>
“The World Atlas of Wine 8th edition” Hugh Johnson & Jancis Robinson
日本ソムリエ協会 2020教本
WSETワインレベル2、レベル3教本

この記事で紹介したワインはこちら


ビシクレタ・レゼルバ シャルドネ
ビシクレタ・レゼルバ シャルドネ
フレッシュなパイナップルのトロピカルな香りと、微かなハーブやオレンジなど白い花のニュアンスが特長的。柔らかな酸味とトロピカルフルーツを思わせる果実味豊かなワイン。


レゼルバ・エスペシャル “ヴァレー・コレクション” シャルドネ
レゼルバ・エスペシャル “ヴァレー・コレクション” シャルドネ
ミディアムトーストのフレンチオーク新樽で7ヶ月熟成。鮮烈なパインやマンゴーの香りに、柑橘系の香りとハチミツやメロンのノートが複雑性を与える。柔らかな口当たりでボリューム感があり、豊かな果実味と深みのあるコクが楽しめる。


シングルヴィンヤード シャルドネ
シングルヴィンヤード シャルドネ
エル・センティネラ葡萄園の第5区画「ケブラダ・アルタ Quebrada Alta(=小川の上流)」の葡萄を使用。トロピカルフルーツや白桃のような柔らかな香り、白い花のニュアンス。きれいな酸味とリッチな果実味、ミネラル感を備えた滑らかで豊かな味わい。


20バレルリミテッド・エディション シャルドネ
20バレルリミテッド・エディション シャルドネ
洗練度の高いクリーンな酸味と、それを包み込むように程よいボディがあり、非常にバランス良く上品な味わい。

この記事を書いた人

熊坂 仁美

くまさか ひとみ

熊坂 仁美

  • (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート

SNSを中心にデジタルマーケターとして10年、企業アドバイス、書籍、記事の執筆、講演等を行ってきた。数年前から趣味でワインを飲むうちにはまっていき、本格的に勉強を開始して資格を取得。次の10年は、ワインや日本酒の文化とテロワールをテーマに研究と発信を行っていく。ワインの魅力で人を動かす「ワインツーリズム」にも大きな関心を寄せている。