2020.11.30

  • 知識

【ブドウ品種に詳しくなろう!】Vol.2「ふくよかで柔らか、親しみやすい赤」メルロー


1. メルローってどんなブドウ?

■超高級ワインから親しみやすいテーブルワインまで
ワイン用ブドウを知るシリーズ、初回のカベルネ・ソーヴィニヨンに続き、2回目はカベルネとブレンドされることが多い「メルロー」を取り上げたいと思います。前回でも書きましたが、この2品種の相性は抜群。タンニンも酸も強めのカベルネ・ソーヴィニヨンは、中程度のメルローとブレンドすることで味のバランスが取りやすいだけでなく、早めに収穫できるため、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンのリスク(収穫期の悪天候の影響や病害)を緩和することができるのです。メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンの「最高の相方」と言えるでしょう。

世界の栽培面積ではカベルネ・ソーヴィニヨンに次いで世界2位ですが、原産地のボルドーでメルローはカベルネ・ソーヴィニヨンよりも栽培面積が多く、フランス全体でも最も栽培されています。
メルローが面白いのは、ブレンドによく使われてあちこちで「いい仕事」をするだけでなく、単一としてもよく飲まれているところ。ボルドー右岸のサンテミリオン地区やポムロール地区では超高級ワインを生み出し、ポムロールの「シャトー・ペトリュス」などは1本何十万円もします。かと思えばリーズナブルなテーブルワインとして世界中で幅広く愛されており、いろんな顔を持つ品種と言えるでしょう。

■ふくよかで柔らかなワイン
メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンと気候条件はほぼ同じで、温和または温暖な気候で育ちます。果実は大きく果皮は薄く、カベルネ・ソーヴィニヨンより2週間ほど収穫が早いといわれています。カベルネと比べてタンニンも酸も少ないのが特徴ですが、ボディがあり、温暖な地域のものはアルコールも高めになります。

ジャンシス・ロビンソン監修の『ワールド・アトラス・オブ・ワイン(世界のワイン図鑑)』には、メルローについて「plump, soft and plummy(ふくよかで柔らか、プラムの風味)」と紹介されています。

そう言えば、あの島耕作がメルローを「丸みがあって口当たりやわらか、女優で言えばかたせ梨乃のような」と例えていました。「ふくよか」の例えにグラマー女優を持ち出すところは、さすがワイン好きで知られる弘兼憲史先生、うまいですね。

代表的な産地はカリフォルニア北部、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本でも欧州系の品種としてはトップの生産量を誇り、特に長野県の塩尻が産地として高い評価を受けています(ソムリエ石田博氏著『ワインの新スタンダード/世界文化社』より)

■味わいの特徴
色調はルビーがかった赤色です。カベルネ・ソーヴィニヨンに似ていますが、酸や渋みは控えめで、柔らかく滑らかな味わい。ラズベリー、ブラックベリー、グーズベリー、プラム、樽熟成したものはチョコレート、キャラメル、ヴァニラなどの特徴があります。

■「メルロー」の特徴まとめ


1. ブレンドされることも多いが、単品種としても人気
2. 早熟種で温和〜温暖な気候で育つ
3. タンニンと酸は中程度
4. プラム、ブラックチェリーなど黒系果実のアロマ
5. ふくよかでまろやかな味わい
6. オーク樽を使用することでさらに味わいが深くなる

2. コノスルのメルロー

■高品質なメルローを生み出すコルチャグア・ヴァレー
安定した気候と高い技術でハイパフォーマンスなワインを産出するチリは、カベルネ・ソーヴィニヨン同様メルローにおいても優れたワインを生産しています。
メルローの栽培はコルチャグア・ヴァレーが中心です。コルチャグア・ヴァレーはラペル・ヴァレーの南に位置する産地で、ブドウ畑はアンデス山脈の麓に広がっており、気候は一年を通し穏やかで、日中は暖かく、夜間は涼しい気候。メルローのまろやかさはこの温暖な気候から生まれるのです。産地内を流れるティンギリリカ川から灌漑をしています。


<高品質のメルローが育つコルチャグア・ヴァレーの畑 >


コノスルにはメルローのラインナップが4種類あり、予算に合わせて選べるのがうれしいところ。今回私は「レゼルバ・エスペシャル」と「20バレル」を飲んでみました。  



レゼルバ・エスペシャルは50%を樽で8~10ヶ月、50%をステンレ ススチールタンクで12ヶ月熟成しています。20バレルはフレンチオーク樽で16ヶ月、ステンレスタンクで1ヶ月。

第一印象がまろやかなのは両方とも同じで、プラムやブラックチェリーの果実味が心地よく、レゼルバ・エスペシャルのほうはほんのりとココアやコーヒーのニュアンスがあります。20バレルはさらにホワイトペッパーやヴァニラも感じます。余韻は両方とも長く、特に20バレルの余韻は長く続きました。酸味は20バレルのほうが高めですが、タンニンはレゼルバ・エスペシャルのほうに強く感じました。  

3. メルローのフードペアリング

■トマトソースのイタリアンに
メルローは幅広く食事に合わせやすいワインですが、特にどんな料理に合うのでしょうか。イギリスのThe Guardian(ザ・ガーディアン)誌やワイン雑誌Decanter(デキャンター)などにもフードペアリングの記事を書くフードライター・フィオナ・ベケット氏が、自身のフードペアリングサイト「Matching Food & Wine」にメルローのペアリングについてこう書いています。
「スムーズで丸みがあってタンニンも多くないメルローはワインペアリングに関してはとても柔軟性があります。カベルネと違うのはイタリア料理に合いやすいこと。特にトマトベースのもの、そしてローストチキン、マッシュルーム、パルメザンなど「うまみ」のあるものによく合います

なるほど、イタリアンに合う赤ワイン!いいですね。トマトソースのパスタなどを作った時にはメルローを選べば間違いなさそうです。
フィオナは「スパゲッティミートボール」や「ラザニアなど焼いたパスタ」に合うとリストアップしています。



パルメザンチーズをかけたらさらに合いそうですね。
また、ソースにも活躍するとフィオナは書いています。

「リッチなソースをかけたステーキ(または魚)にはとても合います。また、ワインベースソースを作る時にメルローは活躍します。タンニンが多いワインだと強すぎてしまいますが、メルローならリッチなワインソースが作れます
さらに、野菜のグリルなどにも。
「キャラメライズしたロースト野菜、例えばスカッシュ、赤ピーマン、ビーツ、そしてマッシュルームのフライドグリルなどもおすすめ。果実味の強いメルローは、クランベリーソース、レッドベリーを入れたサラダなどにもよく合います

クランベリーソースを添えたお肉やフルーツを入れたサラダにメルロー、美味しそうですね!
「甘みがあるので、インド料理ほどではない辛いスパイスを効かせた焼き魚やジャンバラヤもいいでしょう。アニスやフェンネルなどのスパイスに合います」

なるほど、少しエスニックな感じでも合うようですね。

■クリスマス料理のお供としても
また、ローストチキンやターキーとも相性抜群のようですので、クリスマスにも活躍しそうです。



他にもたくさん料理が紹介されていましたので、一部をご紹介します。

・フェンネルが入ったイタリアンスタイルのソーセージ
・マカロニチーズ
・ミートローフ
・ハンバーガー(特にチーズバーガー)
・ジャンバラヤのようなスパイシーでリッチな料理
・スモークハムやチョリソーを入れた豆料理
・ローストターキー
・あまり強いフレーバーがないハードチーズ
・焦がし気味に焼いたサーモン
・北京ダック
・アプリコットやプルーンを入れたチキンやポークのキャセロール

いかがでしょうか、合わせてみたい料理はありましたか。ローストチキンにもバッチリ合うとのことですので、このクリスマス、チキンとコノスルのメルローを合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。



<参考記事>
https://www.matchingfoodandwine.com/news/pairings/which-foods-match-best-with-merlot/

<参考文献>
“The World Atlas of Wine 8th edition” Hugh Johnson & Jancis Robinson
日本ソムリエ協会 2020教本
WSETワインレベル2、レベル3教本
『ワインの新スタンダード』石田博著(世界文化社

この記事で紹介したワインはこちら


20バレル・ リミテッド・エディション メルロー
20バレル・ リミテッド・エディション メルロー
ミディアムトーストのフレンチオーク新樽で11ヶ月熟成。類い稀な凝縮感と優雅さを兼ね備え、力強い骨格と滑らかで溢れんばかりのタンニンが特長。


レゼルバ・エスペシャル “ヴァレー・コレクション” メルロー
レゼルバ・エスペシャル “ヴァレー・コレクション” メルロー
熟成は11ヶ月。70%樽、30%ステンレスタンク。プラム、ブラックベリー、チェリー、カシスなどの黒果実の香りの他にほのかなピーマン、モカ、チョコレートも感じる。複雑性と凝縮感を感じさせ、熟成した果実味が柔らかで丸みを帯びたタンニンと調和している。

この記事を書いた人

熊坂 仁美

くまさか ひとみ

熊坂 仁美

  • (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート

SNSを中心にデジタルマーケターとして10年、企業アドバイス、書籍、記事の執筆、講演等を行ってきた。数年前から趣味でワインを飲むうちにはまっていき、本格的に勉強を開始して資格を取得。次の10年は、ワインや日本酒の文化とテロワールをテーマに研究と発信を行っていく。ワインの魅力で人を動かす「ワインツーリズム」にも大きな関心を寄せている。