2020.09.03

  • 知識

【ワイン好き必読!】最近よく聞く「サステナビリティ」の意味を正確に知っておこう!

よりよい世界を目指すための国際目標「SDGs」の普及にともない、最近、よく耳にするようになった「サステナビリティ」という言葉。ワイン雑誌やメディアでも様々な特集が組まれるなど頻繁に目にするようになってきました。しかしいろいろな分野でいろいろな文脈で語られることも多いことからわかりにくく、その意味を正確に把握している人は案外少ないように思います。そこで、今回はサステナビリティについて、「ワイン産業」という切り口で解説していきたいと思います。

1. サステナビリティとは?



サステナビリティとは「持続可能性」という意味。もともとは「環境と開発に関する世界委員会」(委員長:ブルントラント・ノルウェー首相)が1987年に公表した報告書「Our Common Future」の中心的な考え方として取り上げた概念で、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」のことを指しています。

この考え方は1992年の国連地球サミットで「環境と開発に関するリオ宣言」や「アジェンダ21」などに具体化され、それ以降、地球環境問題に関する世界的な取り組みの中心的な理念となりました。その根本の考え方は、「環境保全と開発は互いに対立するのではなく共存可能である」というものです。

将来の世代に引き継ぐ豊かさを犠牲にすることなく、現在に生きる世代の豊かさを追求していくことは可能なことであり、私たちはそこをめざすべきだ、という考え方。その広がりは、目先の利益を追求することが企業の至上命題であった時代の終わりが来たことを意味しています。

「環境に配慮しながら、経済的にも実行可能で、社会的にも公正な、つまりその産業にかかわるすべての人を幸せにするような在り方を模索していこう」

「一部の人々の利己的な利益追求ではなく、多くのステークホルダーの利害の調整のなかで、誰ひとり犠牲にしない発展をめざしていこう」

そのような意識がいま、世界的に共有されているのです。

そして、ボルドーをはじめ、多くのワイン産地でも地域をあげた取り組みが行われています。その本気度を見ると、サステナビリティを追求することにワイン業界の未来がかかっているという危機感が業界全体の共通認識として広がっているのがわかります。

チリのワイン産業の取り組み

1) チリのサステナビリティ意識が高い理由

ワインが全輸出の2%を占めるチリも、サステナビリティをリードする主要国のひとつ。ワイン産業の安定した成長のため、「ワインズ・オブ・チリ(チリワイン協会)」が生産者のサステナブルな取り組みを積極的に啓蒙し支援しています。

チリのワイン産業の大きなメリットは、フィロキセラや収穫期の雨がないということです。病害が少ないので殺虫剤や農薬を散布する必要がなく、有機農法なども導入しやすい素地があります。さらに、物価が安く土地購入価格や労働コスト面で大きなアドバンテージがあります。このような条件に恵まれているために、生産量も2018年のデータでは世界6位、栽培面積では8位と、世界のトップワイン生産国にランクされ、近年ではヴァラエタルワインのみならず、プレミアムワインの分野でもどんどん存在感が増しています。



チリのワイン産業の発展には欧米のトップワイナリーがかかわっていることも多く、サステナビリティへの取り組みもかなり本格的で徹底しています。南米という遠隔地にありながら、情報面で取り残されているどころか、むしろ最先端に近いところを走っているのです。

2) 地理的条件からくるチリの課題

各国が認証のためのサステナビリティ・コードを定めているなか、チリではブドウの栽培関連はグリーンエリア、ワインの醸造や瓶詰関連はレッドエリア、労働環境や共同体や消費者とのかかわりなど社会的側面に関してはオレンジエリアと3色で分類してそれぞれの分野で認証を申請できるようになっています。コノスルも2013年にはこの3色の認証を獲得しました。



チリの場合、環境への負荷という点では、南アメリカから消費地までの長距離輸送や瓶の製造などのほうが格段に大きいことから、いわゆる「カーボン・ニュートラル(CO2排出量取引のこと)」を目指す取り組みも盛んに行われています。コノスル社では軽量瓶を使用してカーボン・フットプリント(環境への負荷をCO2に換算したもの)を12%削減することに成功しました。海上輸送距離が長いチリ産ワインにとってカーボン・フットプリントの削減は大きな課題となっています。

コノスルの取り組み

1) いち早く有機農法へ移行

チリのワイン生産者の中でもサステナビリティの考え方をいち早く取り入れ、力をいれているのがコノスルです。



1998年、コノスルは主要なブドウ畑である、チンバロンゴのサンタ・エリサ農園の施肥と防除の作業を慣行農法から統合防除に切り替え、合成的に作られた肥料や農薬の使用をやめました。こうして、2003年に同農園に有機認定を受けた区画が誕生しました。ブドウ畑全体の生態系を復元する取り組みにも着手しました。ブドウの単一栽培による弊害を減らし、多様な生物で構成された生態系に戻すため、様々な試みが行われています。

里山との連続性をもたせるため、ブドウ畑のなかに在来種の植物を植え、野生生物が往来できるビオコリドーと呼ばれる通路を作ったり、畝間にカバークロップを植え、堆肥を使用して地中の微生物を増やすなど、ブドウ畑に生物多様性を取り戻すべく取り組んでいます。それによって、自然に害虫が除かれ、ブドウが成長するための栄養サイクルが完全なものとなるのです。このような取り組みは持続可能なブドウ栽培をもたらすと同時に、温室効果ガスの削減にも役立っています。CO2吸収量は、森林とブドウ畑の間では5倍もの開きがあるからです。

2) 温室効果ガスの削減

温室効果ガス削減という点でコノスルが優先的に取り組んできたことは、灌水の節約と代替エネルギーへの切り替えでしょう。乾燥地のブドウ畑はどうしても灌漑が必要ですが、井戸を掘って水を貯水池に貯め、必要量を点滴するドリップ式灌漑を導入、さらにポンプの動力を太陽光エネルギーでまかなうなどの取り組みをしています。しかし最近の気候変動により、井戸水が涸れて、栽培ができない土地も出てきていることから、コノスルにとって温室効果ガス削減問題はさしせまった課題となっています。

ただ、温室効果ガス排出の実態調査を見ると、一社だけの取り組みでは解決できない部分もあります。実は排出量全体の半分以上が、ブドウの栽培やワイン醸造の過程ではなく、ガラス瓶の製造とその輸送でしめられていることが明らかになったからです。2018年のCEMARSのデータによれば、ブドウの栽培は約29.3%、ワイン醸造は約16%、ガラス瓶の製造は約26.3%、輸送が海陸両方含めて約27.1%でした。ガラス瓶の製造と輸送による環境負荷が思った以上に大きいことがわかります。

3) ガラス瓶問題の解決策を模索

この問題に対応するために、コノスル社では一部のワインに軽量ボトルを採用したり、カーボン・オフセットの考えに基づいて、クレジットを購入(いわゆるCO2排出権取引)し、ワイナリーとしては初となる『カーボンニュートラルデリバリーステータス』を取得しています。

4) 労働環境の世界基準「For Life認証」取得

さて、コノスルのもう一つの大切な取り組みは、働き手の労働環境への配慮です。おいしくて品質のよいワイン造りを支える熟練した働き手の存在。彼らが良い労働環境で満足して働けるということが高品質なワイン造りには欠かせません。労働者の健康や安全面での管理、差別のない平等な条件と待遇、専門能力を開発できる教育機会など、労働環境を整える努力は、2018年の「For Life認証」という形で結実しました。



For Life認証は、「労働者が安全で公正な労働条件を享受し、基本的権利が満たされ、さまざまな国際機関によって確立された基準に従っている」ことを保証する社会的責任の認定です。同時に事業者の環境パフォーマンス、その役割、および地域社会への影響の評価も加味されています。この認定を受けたことによって、コノスルは名実ともにサステナブル企業のリーダー的存在として認められたのです。

5) コノスルの「自転車」が象徴するもの

コノスルのワインのラベルやボトルにあしらわれている自転車のマークは、ブドウ畑で働く人々の移動手段である自転車です。化石燃料を使わない「カーボン・ニュートラル」な自転車こそが、環境に配慮した企業をめざすコノスルの在り方を象徴しています。

自転車のマークが私たちに想起させるのは、地球環境にやさしく、オーガニックで、健康に良いというイメージ。美しい自然の中で自然とともに暮らす人々の幸福感がダイレクトに伝わります。そしてそれは、そのワインを手に取り口にした時の満足感にも結び付いています。



サステナブルへの流れは一時的な流行ではありません。それどころか、もはやサステナブルな体質への脱皮に成功した企業しか生き残ることはできないとすら言われています。サステナブルを掲げる代表的なワイン生産者としてのコノスルに、これからも注目が集まっていくのは間違いありません。

この記事の監修者

熊坂 仁美

ソムリエ

くまさか ひとみ

熊坂 仁美

  • (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート

SNSを中心にデジタルマーケターとして10年、企業アドバイス、書籍、記事の執筆、講演等を行ってきた。数年前から趣味でワインを飲むうちにはまっていき、本格的に勉強を開始して資格を取得。次の10年は、ワインや日本酒の文化とテロワールをテーマに研究と発信を行っていく。ワインの魅力で人を動かす「ワインツーリズム」にも大きな関心を寄せている。