2020.12.10

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【コノスル家飲みスタイル Vol9】 冬に美味しい鍋で、あったかペアリング<前編>


そろそろ厚手のコートが必要な季節になりました。吐く息が白くなるような寒い夜は、あったかい鍋料理が恋しくなるもの。鍋と一言で言っても種類もたくさんあり、最近は1~2人用の鍋スープや小分けにしたキューブ状のスープが売られています。旬の食材とお好みの鍋スープで手軽に作れるのも鍋料理が人気の理由かもしれません。

では、鍋料理に合うワインとはどんなワインでしょうか。様々な鍋料理とワインをペアリングしてみました。今回も前編、後編の2回にわたりお届けします。

1. 鍋料理の代表格、おでん

鍋料理といって真っ先に思いつくのは、私の場合「おでん」です。コンビニでも冬の定番ヒット商品として各コンビニチェーンで販売されていますし、1〜2人前のパックになったものもスーパーで見かけますよね。そして屋台や小料理屋の丁寧に仕込まれたおでんはまた格別です。



でも自分で作るとなるとなかなか大変です。市販されている練り物系ならそれほどでもありませんが、大根や牛すじなどは下ごしらえが必要ですし、味が浸み込むには時間がかかります。我が家では、おでんは2日がかりです。

おでんにはビールや日本酒が定番ですが、もしワインで楽しめたらいいですよね。おでんとワイン、あまり一般的ではないですが、だからこそ試す価値ありです。きっとぴったりのワインがあるはず。

そこで、ペアリングの基本にならって、白を中心にセレクトしてみました。



左から
・ビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネール
・ビシクレタ・レゼルバ ヴィオニエ
・シングルヴィンヤード シャルドネ
・シングルヴィンヤード リースリング

ペアリングの基本とは、同調のペアリングで、「色を合わせる」「重さを合わせる」「産地を合わせる」などがあります。

おでん出汁は白っぽいですよね。中には静岡おでんのように真っ黒いおでんもありますが、一般的なおでんはかつお節と昆布のお出汁で、少量の醤油や塩が主な味の構成要素です。またおでん種も、大根、たまご、はんぺん、ちくわなど野菜や魚介系が多く、肉類でも鶏肉や牛すじといった白っぽい素材になりますので、味わいも香りも異なる白4種を試してみたいと思います。

2. 白ワイン4種でおでんペアリングに挑戦

ビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネール

ビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネールは、鮮烈なライチの香りや、マスカット、メロン、バラの花びらの甘くエキゾチックな香りが印象的で、よくいうアロマティックなワインです。香りがそのまま味わいにつながるような独特の風味が特長で、ゲヴュルツトラミネールには根強いファンがいるのも頷けます。



しかし、この華やかさがどう出るか。ちょっと無謀かな~と思いつつ、口に含み、余韻がまだ残るうちに、おでんのさつま揚げをパクリ。さらにビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネールをもう一口。どうでしょうか。

クリアな酸味は良いのですが、やはりこの香りが華やか過ぎて、おでんの持つ風味や出汁との相性はちょっと厳しいかもしれません。  

ビシクレタ・レゼルバ ヴィオニエ

次は、同じくアロマティック系のヴィオニエです。ゲヴェルツトラミネールほどエキゾチックではないですが、アプリコットや白桃、クチナシの香りなどこちらもやや華やかな香りの持ち主。ビシクレタ・レゼルバ ヴィオニエは樽熟成していますので、微かに樽熟成を感じさせるナッツの風味があり、マイルドな余韻が楽しめます。



個人的には、ヴィオニエ好きなので、合って欲しい。

とういうことでレッツ、ペアリング!

香りがどうしても出汁と合いません。残念ながら「アロマティック系ワインは、おでんには難しい」と結論づけました。

シングルヴィンヤード シャルドネ

さて、3種目はシャルドネです。コノスルでは各ラインナップでシャルドネがありますが、シングルヴィンヤードシリーズからセレクトした理由として、コノスルが「適地適品種」栽培をコンセプトとして単一葡萄品種を、最適な標高、土壌、気候の単一区画で栽培することで、それぞれの品種の純粋な個性をエレガントに表現したシリーズだからです。

また、シングルヴィンヤードのシャルドネは樽熟しています。おでん出汁は、鰹節を使っていますから、燻した香りがあるので、ここは樽熟しているものが合うのではないかと思いました。輝きのあるレモンイエローで、トロピカルフルーツや白桃のような柔らかな香りが上品に漂い、きれいな酸味とリッチな果実味、さらにシャルドネらしいミネラル感もあります。

さて、おでんとの相性はどうでしょうか。



イイです!合います。

ふくよかな辛口と豊かな酸とボリューム感のあるボディが、魚介系を中心としたおでん出汁に絶妙に合います。これはベストペアリングではないでしょうか。薬味には、からしと柚子胡椒を用意しましたが、どちらでも美味しいです。柚子胡椒の方が、さらに合いますね。これは、シングルヴィンヤード シャルドネには、柑橘系果実やリンゴのような果実香があり、同調のペアリングを一層強めているからでしょう。  

シングルヴィンヤード リースリング

さて、ラストは同じくシングルヴィンヤードシリーズからリースリング。リースリングと言えばドイツやフランスのアルザスが有名ですが、シングルヴィンヤード リースリングはチリの南端ビオビオ・ヴァレーにあるキトラルマン葡萄園のブドウで、ビオビオ・ヴァレー最古のリースリングの樹も植えられているそうです。葡萄の成熟期は一定して気温が低く、赤粘土質土壌であるため、フレッシュで印象的なミネラル感を持ち、ヨーロッパにも負けないクオリティのリースリングが出来るのです。



柑橘系果実や熟れたカリン、桃などの果実香と白い花のような豊かな香りにやや蜂蜜のような味わいが加わり、酸味と果実味とのバランスがよく、ワイン単体でスルスル飲んでしまいそう。

これまた余談ですが、シングルヴィンヤード リースリングは2015年と2018年ヴィンテージで、女性が選ぶワインアワード「SAKURAワインアワード」金賞を受賞しています。やっぱりこのワインは女性が特に好む味わいだと思います。

今度は大根を頬張り、ジュワ~ッと染み出す出汁を存分に感じた上で、シングルヴィンヤード リースリングをいただきます。

うん、悪くない。ちくわやはんぺんなどの魚介系練り物などにはさらに良いかもしれません。フレッシュな酸と柑橘系の香りが合うのはシャルドネと同じ傾向かもしれませんね。

さらにそこへもう一つ、甘やかな雰囲気がシングルヴィンヤード リースリングにはありますが、あくまでも辛口なので、きりっとした味わいが邪魔しないのだと思います。

3. おでんペアリングのまとめ

まとめますと、ダントツでおでんに合うワインは樽の効いたシングルヴィンヤード シャルドネでした。シャルドネを魚介に合わせるのは王道かと思いますが、おでんはさらに肉系の旨味も入りますし、いろんな味わいが素材から出ますので、意外とペアリングが難しいなあと思っていました。そこをきっちり受け止めるシャルドネの器の大きさを感じました。

おでんから派生して海老やカニなどの甲殻類、ホタテや鱈などをメインにした魚介鍋にも合わせてみたところ、やっぱりシャルドネはバッチリ。こちらも最高の相性でした。

樽熟をしている方がおでんには合うと思います。おでんは味わいとしての重さは軽めの方だと思いますが、さっぱりしているようで味わいが複雑ですから、樽熟することで複雑さが生まれるワインと合うのです。ここでも同調のペアリングが功を奏しています。

また魚介系は、旨味が強く、この旨味とのバランスが良いのも樽熟しているシャルドネではないかと思います。



みなさんも、気軽に鍋料理にワインペアリングをお試しください。いつもの鍋料理がグレードアップすること間違いナシです。

後編は、赤ワインをプラスしての鍋ペアリングです。お楽しみに。

この記事で紹介したワインはこちら


ビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネール
ビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネール
鮮烈なライチの香りや、マスカット、メロン、バラの花びらの甘くエキゾチックな香りが印象的。香りがそのまま味わいにつながるような独特の風味が特長。クリアーで雑味がなく飲みやすい。しっかりとした酸味で、香りの印象に比べドライな味わい。


ビシクレタ・レゼルバ ヴィオニエ
ビシクレタ・レゼルバ ヴィオニエ
鮮烈なアプリコット、白桃、クチナシの香りに微かな樽熟成によるナッツのノートが複雑性を与えている。ボリューム感と酸を感じるが口当たりは柔らか。微かに樽熟成を感じさせるナッツの風味があり、マイルドな余韻が楽しめる。


シングルヴィンヤード シャルドネ
シングルヴィンヤード シャルドネ
エル・センティネラ葡萄園の第5区画「ケブラダ・アルタ Quebrada Alta(=小川の上流)」の葡萄を使用。トロピカルフルーツや白桃のような柔らかな香り、白い花のニュアンス。きれいな酸味とリッチな果実味、ミネラル感を備えた滑らかで豊かな味わい。


シングルヴィンヤード リースリング
シングルヴィンヤード リースリング
キトラルマン葡萄園の第23区画「ルーロス・デル・アルト Rulos del Alto(=高い位置の畑)」の葡萄を使用。白い花、柑橘系果実、カリンなどの豊かな香りが楽しめる。果実味がフレッシュで鮮やか。

この記事を書いた人

竹内 綾恵美

たけうち あけみ

竹内 綾恵美

  • (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート

料理が大好きで、国内外問わず、旅先では必ず市場を訪れる。アルコールはあまり得意ではなかったはずが、ワインに出会い、味わいはもちろんのことワイン文化の奥深さに魅了される。2019年にワインエキスパート取得し、ワインと食の追求に邁進する日々。