2021.10.05

  • 楽しみ方

すぐに使えるプロ技満載! スペシャルレシピ考案の星付きシェフ 岸本直人氏インタビュー


コノスル「ビシクレタ・レゼルバ」を、本格フレンチと一緒にご家庭で楽しんでいただきたい!

そんな思いから、これまで有名グルメガイドで数々の星を獲得してきた岸本直人シェフ(東京・神田錦町「naoto.K」)に特別にご協力いただき、ペアリングレシピを考案していただきました(レシピのページはこちら)。

今回のインタビューでは、「レシピのこの手順をもう少し詳しく聞きたい」という点や、星付きシェフならではのプロ技など、岸本シェフにお伺いして来ました。ぜひ、レシピと合わせてご覧ください!


岸本直人シェフ プロフィール

1966年東京都出身。17歳で料理の世界へ飛び込み、22歳でフレンチの鉄人こと【ラ・ロシェル】の坂井宏行氏に師事。 その後、フランスへと渡り、ロワールの【ラ・プロムナード】、パリの【フォーシェ】などで研鑽を積む。

帰国後、銀座【オストラル】のスーシェフ、シェフに就き、2006年青山に【ランベリー ナオト・キシモト】をオープン。 【ランベリー ナオト・キシモト】は有名グルメガイドで星を獲得。

2013年春には青山に【Bis】をオープン。 2014年春には京都・八坂神社内にレストラン【ランベリー京都】をオープン。

こちらも、開店から半年で有名グルメガイドにて星を獲得している。 2021年8月に東京・神田錦町に「naoto.K(ナオトケイ)」をオープン。

YouTubeチャンネル:
naotoK - フランス料理人 岸本直人の火入れ術

naoto.Kについて



―岸本シェフ、今日はよろしくお願いします。有名グルメガイドでこれまで12個の星を獲得した岸本シェフですが、今回オープンした「naoto.K(ナオトケイ)」はどんなお店でしょうか。

岸本:「naoto.K(ナオトケイ)」は、8月末、東京・神田錦町にオープンしました。料理のコンセプトは「ランベリー」と変わらず、日本の「旬」の素材をフランス料理に落とし込んで表現していくというものですが、今回は店のスタイルを変えて8席のカウンター席だけにしました。お客様の目の前で料理しますので、素材の「旬」とできたての瞬間の「瞬」をお届けすることができます。お客様はやはり食べこんでいる(食通の)方が多いですね。カップルやご友人同士はもちろん、お一人で来られても楽しめるお店です。



―どんなワインを置いていらっしゃいますか。

岸本:ワインはフランスワインを中心に一通りそろえていて、グラスワインもいろいろご用意しています。ただ、こんなご時世ですので、お酒の提供が難しい場合はノンアルコールでもお楽しみいただけるようにティーペアリングなどもご用意しています。

「ワインに合う料理」の考え方

―今回、シェフにはコノスルのビシクレタ・レゼルバに合う4つのレシピを考えていただきました。

岸本:今回このお話をいただき、支配人やソムリエなど、スタッフみんなでビシクレタ・レゼルバ4種を試飲して、ニュアンス、印象を掘り起こしていきました。これは苦みがあるとか、これは酸がしっかりしているので魚介に合わせたいね、とか。同じ赤ワインでも、さらっとしている、コクがある、白ワインなら洋梨っぽいのかグリーンがかっているかを見て、これはこのハーブ、こんなスパイスを使おうか・・・というように決めていきました。

―ゲヴュルツトラミネールに合わせた「ボイルハムと焼きパイナップル オリエンタルオードブル」ではカレー粉が使われていることに感動しました。なかなか思いつかない組み合わせです。

岸本:コノスルのゲヴュルツトラミネールはパイナップルのニュアンスがあったのでパイナップルを使うことは決めていたのですが、試食してみたらちょっと大人しすぎるので、エキゾチックな感じを入れたいね、ということでカレー粉を入れました。

―カレー粉の風味がワインにぴったり合って美味しかったです!では四つのレシピそれぞれについて詳しく伺わせてください。

四つのレシピを美味しく作るコツ


1,ステーキを美味しく焼くには〜「国産牛フィレ肉のステーキ ピリッと柚子胡椒ソース」



―まずは、カベルネ・ソーヴィニヨンに合わせた「国産牛フィレ肉のステーキ ピリッと柚子胡椒ソース」について教えてください。ステーキソースに柚子胡椒というのは、これもなかなか思いつかない組み合わせですね。

岸本:このカベルネ・ソーヴィニヨンには清涼感があったので、同じく清涼感のある青柚子胡椒を合わせてみました。ソースの赤ワインも、合わせるワイン(カベルネ・ソーヴィニヨン)を使っていただくと良いと思います。そうするとさらに料理がワインにぴったり合ってきます。

―お肉と一緒に付け合わせを焼くやり方もいいですね。

岸本:これは時短の工夫です。料理を作ったあとに洗い物がいっぱい出たら大変ですよね。美味しいワインと美味しい食事でレストランのように楽しんでいただく、というのがこの企画の目的ですから、後片付けがラクになるように考えました。
 
―お肉を焼いた後いったん休ませる、というのも勉強になりました。

岸本:ここはとても大事です。お肉は一度に焼き切ってしまうとどうしても外がパサパサします。ゆっくりゆっくり中に温度を伝えたいので、いったん火からおろしてアルミホイルに包んで休ませます。それが肉を美味しく焼くコツです。

―そして休ませたあと、もう一度焼くのですね。

岸本:そうです。二度目は香ばしさを出すためにさっと焼きます。肉に熱を伝えていく方法として、1回目は温度を伝える、2回目は香ばしさを出す。役割分担を二部に分けるんです。


2,バターで焼くメリット〜「鶏胸肉のとろ~りチーズピカタ簡単トマトソース」



―次はピノ・ノワールに合わせたチキンのピカタです。もも肉ではなく胸肉を使うのはなぜですか。

岸本:もも肉はパンチがあって荒々しく、胸肉は味が繊細なのが特徴ですが、今回は繊細なピノ・ノワールに寄り添わせるのが目的なので胸肉にしました。淡泊なところはチーズで補いました。チーズのような油脂とワインは相性がいいですからね。

―簡単トマトソースはミニトマトを使うんですね。

岸本:これも時短です。普通のトマトは煮込んで水分を飛ばして味を凝縮させますが、ミニトマトはもともと味が詰まっています。だったら最初から凝縮しているミニトマトを使ったほうが簡単でいいかなと。味の濃さは水で調節します。

―水っぽくなったりしませんか。

岸本:なりません。水は無色で無味の最高のブイヨンなんです。ぜひ水を使ってください。そしてトマトソースというと上からかけてしまう人が多いですが、鶏の下に敷いてください。そうすることで鶏の皮の香ばしさが強調されます。

―チキンは溶かしたバターをかけながら焼くのですね。

岸本:肉は急激に焼くと筋肉が縮まってしまいます。バターは空気が入っているし温度帯が柔らかいのでじんわり焼けるんです。やわらかい火でバターを肉の上にかけながらゆっくり、がいいんです。バターには水分もあるし、風味もあります。バターの焼いた香りとワインは抜群に合いますしね。


3,ビネガーを使い分ける〜「ホタテのポワレ 柑橘類のサラダ コリアンダーヴィネグレットソース」



―シャルドネに合わせたホタテのポワレです。ホタテがとても美味しそうです。

岸本:そうですね。今回はちょっといいものを使いました。サイズはもっと小さいものでもいいですが、ホタテを選ぶときにはドリップが出ていないものを選んでください。焼く前にホタテの表面の水気を拭いて、きれいな焼き色をつけてくださいね。

―レシピには、柑橘は「グレープフルーツ」と「デコポン」とあります。

岸本:柑橘は手に入るものでかまいませんが、いろんな種類を入れたらより複雑な味わいになります。柑橘はたっぷり入れてみて下さい。それとディルを忘れずに。

―ディルは大事なんですね。

岸本:この料理はディルがポイントですのでできるだけ省かず用意してください。カツ丼にお漬物で調和を取るように、ハーブには料理の調和をとる効果があります。シャルドネにもディルはとても合います。

―材料に「シェリービネガー」とあります。

岸本:シェリービネガーはスペインの酒精強化ワインのシェリーをベースにしたビネガーです。プロが使うビネガーは4段階あります。尖らせた酸が欲しかったら白ワインビネガー、コクがほしい場合は赤ワインビネガー、さらに熟成されて甘みが兼ね備わっているのがシェリービネガー、煮詰めた感じを出すのがバルサミコビネガーです。今回のコリアンダーヴィネグレットソースには熟成感があるシェリービネガーが合いますが、手に入らない場合はバルサミコビネガーか赤ワインビネガーでも代用できます。この料理の場合は赤ワインと相性がいいハチミツをキャラメリゼ(焦がす)しているので、赤ワインビネガーがいいですね。

―なるほど、4種のビネガーの使い分け、とても勉強になります!


4,カレー粉でエキゾチックに〜「ボイルハムと焼きパイナップル オリエンタルオードブル」



―最後に、先ほど少し伺ったパイナップルのオードブルですが、これは本当に簡単にできるのでリピートしそうです!ゲヴュルツトラミネールにもすごく合いました。

岸本: 「10分でできる料理」ということで考えました。ハムと焼いたパイナップルを合わせるだけですが、パイナップルをバターで焼き、カレー粉でエキゾチックな感じを加えることで、よりゲヴュルツトラミネールと合ってきます。最後にルッコラやクレソンなどの香味野菜をお好みで入れますが、ピリッとしたクレソンがこのビシクレタ・レゼルバのゲヴュルツトラミネールには合いますね。

―ハムはどんなものを選んだらよいですか?

岸本:出来ればいいハムを選んで欲しいです。いい材料のほうが美味しくできますから、満足度は高くなると思います。お肉屋さんでスライスしたハムがあれば最高ですね。


家飲みワインを楽しむヒント

―家庭でワインを楽しむコツを教えていただけますか。

岸本:ワインは適正温度に保つ、ここは頑張って欲しいところですね。白ワインなど冷やして飲むものはちゃんと冷やすのがポイントです。

そして、お皿とグラスを普段と変えるだけで盛り上がります。お箸ではなくナイフとフォークでちゃんと食べる。ワイングラスも、ワインの種類によって使い分けるまではいかなくても、ちょっとお洒落なグラスで飲むだけで気分が違いますよね。

―その通りだと思います。

岸本:そして材料ですね。例えばさきほどホタテの話が出ましたが、ちょっと高級なものを買ってみるのも良いと思います。出費にはなりますが、レストランに行くよりは手頃です。ましてコノスルワインは、「ワインは高嶺の花」というイメージを打ち崩すワインで、ものすごくコストパフォーマンスが高い。ですからそこで浮いた予算を材料と器に投資することができますよね。

―たしかに、コノスルを選ぶことで、余裕が出来た予算を器と食材にかければ、家で質の高いフレンチディナーが楽しめますね。

「レシピに忠実に」が最大のコツ


岸本:最後にもうひとつ、一番大事なコツです。私は長い間料理教室をやっていましたが、自己流になってしまう人が結構いらっしゃいます。やりやすいように手順を省いていくと、その方の「わたし流」になってしまう。せっかくレシピを考えたので、ぜひこれに沿ってやっていただきたい。絶対に美味しいものが作れます。

―自己流・・・耳が痛いです(笑)。

岸本:料理を美味しく作れる人は行き当たりばったりではなく、手順を理解してやる人です。ですので、材料の買い物に行くときにもちゃんとメモをして、買い物から帰ったら、いきなりフライパンを温めるのではなく、一呼吸置いて、レシピの手順を見て自分の中に落とし込んでからやってみてください。それだけで仕上がりが全然違ってきますよ。

―わかりました、そうしてみます。レシピに忠実に、本格フレンチ料理に挑戦したいと思います。今日はたくさんアドバイスありがとうございました!


ビシクレタ・レゼルバ  カベルネ・ソーヴィニヨン
ビシクレタ・レゼルバ  カベルネ・ソーヴィニヨン
鮮烈なカシス、チェリー、プラムの香りに、ミントやコショウなどスパイスの香りが複雑性を与えている。エレガントでしっかりとした骨格を持つ、果実味豊かで深い味わいのワイン。


ビシクレタ・レゼルバ ピノ・ノワール
ビシクレタ・レゼルバ ピノ・ノワール
鮮烈なチェリー、プラム、イチゴの香りに、なめし皮やタバコのニュアンスが複雑性を与える。中庸な酸味とタンニンのバランスが良く、複雑で豊かな味わいのワイン。僅かにスパイシーな後味が楽しめる。


ビシクレタ・レゼルバ シャルドネ
ビシクレタ・レゼルバ シャルドネ
フレッシュなパイナップルのトロピカルな香りと、微かなハーブやオレンジなど白い花のニュアンスが特長的。柔らかな酸味とトロピカルフルーツを思わせる果実味豊かなワイン。


ビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネール
ビシクレタ・レゼルバ ゲヴュルツトラミネール
鮮烈なライチの香りや、マスカット、メロン、バラの花びらの甘くエキゾチックな香りが印象的。香りがそのまま味わいにつながるような独特の風味が特長。クリアーで雑味がなく飲みやすい。しっかりとした酸味で、香りの印象に比べドライな味わい。

この記事を書いた人

熊坂 仁美

くまさか ひとみ

熊坂 仁美

  • (一社)日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート
  • (一社)日本ソムリエ協会 SAKE DIPLOMA
  • WSET SAKE LEVEL3
  • WSET Level3

SNSを中心にデジタルマーケターとして10年、企業アドバイス、書籍、記事の執筆、講演等を行ってきた。数年前から趣味でワインを飲むうちにはまっていき、本格的に勉強を開始して資格を取得。次の10年は、ワインや日本酒の文化とテロワールをテーマに研究と発信を行っていく。ワインの魅力で人を動かす「ワインツーリズム」にも大きな関心を寄せている。